2020-01-01から1年間の記事一覧

磯野真穂『医療者が語る答えなき世界』を読む

磯野真穂『医療者が語る答えなき世界――「いのちの守り人」の人類学』筑摩書房(ちくま新書)2017年 ISBN978-4-480-06966-5 若手の人類学者の一般向けの本を読むシリーズの第二弾は、磯野真穂さんの2017年刊の本です。磯野さんはこの後も、がんで亡くなった哲…

松村圭一郎『うしろめたさの人類学』を読む

松村圭一郎『うしろめたさの人類学』ミシマ社、2017年 ISBN978-4-903908-98-4 ブログを休んでいる間に、1970年代後半生まれの若い人類学者で、学界向けだけでなく、一般向けに本を書いて出版賞を取ったり、一般雑誌や新聞などで発信したりする人たちが登場し…

「新しい生活様式」と「生命崇拝」――アガンベンとイリイチから学ぶこと

そろそろCOVID-19パンデミック以外の話題を、と思っていたのですが、結局、まだコロナ禍の話です。「新たな日常(ニュー・ノーマル)」ないしは「新しい生活様式」の問題点について、まだ十分に考えていないと思ったからです。「Yahoo! ニュース みんなの意…

ハキム・ベイの『T.A.Z.』を読む

ハキム・ベイ『T.A.Z.:一時的自律ゾーン、存在論的アナーキー、詩的テロリズム[第2版]』箕輪裕訳、インパクト出版会、2019年11月 ISBN978-4-7554-0278-4 この本は、1997年に出た第1版の訳書に原著の第2版(2003年出版)の前書きを加えた改訂版と…

ジェームズ・C・スコットの『ゾミア――脱国家の世界史』を読む

ジェームズ・C・スコット『ゾミア――脱国家の世界史』佐藤仁監訳、みすず書房、2013年9月ISBN978-4-622-07783-1 ブログを休んでいた10年のあいだに出版された人類学の文献の中で最も重要な本の一冊として、ジェームズ・C・スコットの『ゾミア』(原題は『統治…

『新型コロナ19氏の意見』の2人の人類学者のエッセイを読む

再開以前はこのブログの読書ノートに人類学の本は取り上げないという方針でした。それは、専門的になりがちだからという理由と、人類学の文献については大学のゼミで取り上げたり授業のなかでコメントをしたりしていたからでした。けれども、今後は人類学の…

「新しい日常」と具体的な他者への配慮としての倫理

また、COVID-19の話です。タイトルは別にしましたが。 さて、東京都など首都圏4都県と北海道に出されていた緊急事態宣言も解除されることになりました。気持ちや行動をどのように変えればいいのか(しかも段階的に!)、よく分からないというのが正直なとこ…

人類学的視点からみたポストCOVID-19社会(3)

今回は、「人類学的視点からみたポストCOVID-19社会(1)(2)」の続きです。そこでは長くなりすぎるので省いた話やその後の論考を読んで考えたことなどを書きたいと思います。 今回のパンデミックに限らず、恐慌を含めた大きな災害があると、たいていその…

日本の「奇跡的で奇妙な成功」

2か月以上も何もアウトプットしていなかった反動か、しはじめると調子に乗ってつづけたくなります(ツイッターじゃないんだからそんなに頻繁にしなくてもね)。今回も新型コロナウイルスの話ですが、前回までとは違った角度からの話をします。 共同通信によ…

人類学的視点からみたポストCOVID-19社会(2)

前回、〈コモン=共〉における相互扶助(「共助」)による社会のあり方に目を向けることが、ポスト・コロナ社会を考えるうえでも重要な人類学的視点となるというところで終りました。今回はその続きです。〈コモン=共〉について、ネグリとハートは、『コモ…

人類学的視点からみたポストCOVID-19社会(1)

およそ10年と7か月ぶりにブログを再開することにしました。今年の3月31日に大学を定年退職して、大学教員にとって日常的なアウトプットであった授業がなくなって、そろそろ何かを発信したくなってきたというのが再開の理由です。そもそもこのブログを始め…