2008-01-01から1年間の記事一覧

2008年「今年の5冊」

年の瀬もいよいよ押し詰まりましたが、12月末締切りの原稿がまだ2つ溜まってしまっています。毎年のように「年末締切」の原稿があり、年々増えていきます。これはひとえに「オーディット・カルチャー」のせいです。学振(科研費)や共同利用機関や大学の共…

祝クロード・レヴィ=ストロース100歳の誕生日

きょう11月28日は、クロード・レヴィ=ストロースの100歳の誕生日です。予定原稿でも作っておいて気の利いたことでも載せればよかったのでしょうけれども、行き当たりばったりで。 主著の『神話論理』の最終巻(神話論理4)の第一分冊の『裸の人1』はよう…

ホームページ更新のお知らせ

「小田亮の研究ホームページ」の「講義・講演・口頭発表原稿」のページに、「共同体と代替不可能性について」(http://www2.ttcn.ne.jp/~oda.makoto/page040.html)をアップしました。 今年の6月下旬から7月上旬にかけて、3つの研究会で発表したものを1つ…

評価することと愛することは同じ場ではできない

11月12日のエントリーに対して、きょう、さちがさんから以下のような2回目のコメントをいただきました。それに対する応答をコメント欄に書こうとしたのですが、あまりに長くなったのと、コメントと関係のない脱線が多くなったのでエントリーにしちゃいまし…

言論の自由について

論文執筆で忙しいさなかですが(いつのまにか次の締切が近づいてきました)、田母神前空幕長の更迭問題に絡んで、「言論の自由」についての言説が飛び交っているようです。この言葉の使い方が前から気になっていたので、ちょっと言論の自由について書いてみ…

税金を払わない人に金券を配ると合法的買収?

11月4日の毎日新聞夕刊の「牧太郎の大きな声で言えないが…」というコラムで、次のようなことが書かれていました。 追及すべきは「税金を納めない人にも一律に定額給付する経済政策」である。税金を払わない人にまで金券を配る。大枚2兆円。選挙前の合法的買…

なぜ消費税の増税なのか

麻生首相が30日、全世帯を対象とした総額2兆円規模の給付金支給などを柱とした追加経済対策を発表した際に、3年後の消費税率の引き上げを明言しました。消費を拡大するための政策を発表するときに、増税を明言するって、給付金支給の効果を無にするような…

ベーシック・インカムについて(補遺)

黄色い犬さん、コメントありがとう。予告編には期待していますというコメントをいくつかいただいたのに、本編にはコメントがなかったので期待外れだったのかなと思っていました。これで心おきなく仕事をしようと思っていたのですが、黄色い犬さんのコメント…

ベーシック・インカムについて(3)

さて、連載3回目です。 前回の最後に、ベーシック・インカムによって労働意欲がなくなり、モラル・ハザードを招くという右派やエコノミストの危惧を挙げました。それと関連して、ベーシック・インカムに反対する人たちの理由として最も多いのが、「働く気も…

ベーシック・インカムについて(2)

世界金融危機にはじまる不況によって、何かシステムを変えなくてはという流れができつつあるようにも思いますが、はたしてどういうシステムにするのか、またどういう人たちがそれを考えるのか。それを思うと、結局はなかなか変わらないのかなという気もしま…

ベーシック・インカムについて(1)

ようやく前門の虎も後門の狼もいなくなって一息ついたところです*1。その間にchinalocaさんからも催促をいただき(chinalocaさん、お久しぶり)、ベーシック・インカムについて書くことへのハードルがかなり高くなってきましたね*2。ちゃんと議論しようとす…

ベーシック・インカムについて(予告)

前々回のエントリーで触れた「ベーシック・インカム」について書こうと思っていたのですが、とっくに締切のすぎた原稿をまだ書かないうちに、前方から別の現行の締切が2本迫ってきている、まさに「前門の虎、後門の狼」という状況です(どこか「まさに」な…

星野監督はなぜ短期決戦に弱いのか

締切のすぎた原稿ややらなきゃいけない仕事が溜まっているにもかかわらず、けっこう連日オリンピック中継のテレビ観戦で忙しくなっています。きょうもこれから野球を見る予定です。 さて、その野球ですが、苦戦をしています。日本代表にはわがドラゴンズから…

フリーライダーをするサーファー――続「フリーライダー」

「とびとびの日記」のはずのこのブログも「ほぼ月刊」になりつつありますが、今月からはせめて「ほぼ週刊」を目指したいと思います。 さて、今年の3月30日に「気になる言葉」シリーズの第一弾として「フリーライダー」を取り上げましたが、その後、フリーラ…

お久しぶりに

きょう、30年前ぐらいからの古い知り合いで、ふだんはフランス在住のR氏から電話がかかってきました。電話も10年ぶりくらいじゃないでしょうか。いまは日本に滞在中とのことで、フランスで見た私のブログの「炎上」のことが話題になりました。読んでくれたん…

深夜放送的なニッチをつくるのは難しい

前回のエントリーは、このブログにしては大変にぎやかなことになりました。最初に寄せられたコメントにムカッときて、温厚で知られる私としては攻撃的な応答をしてしまったのがまずかったのかもしれません(反省)。それが、上からものを言っていると怒らせ…

正義と倫理のあいだについて

レヴィナスの話で好きなのが、裁きと顔の関係の話です。ポワリエとの対話の本、『暴力と聖性』(国文社、1991年)のなかで、レヴィナスは次のように言っています。 ある聖句は「裁きを下す者は個人の顔を見てはならない」とあります。つまり、裁き人は自分の…

気になる言葉シリーズ・第2弾――「他人に迷惑をかけないなら、何をしてもいいだろ」

ローランさんがコメントを下さったので、調子に乗って「気になる言葉シリーズ」の第2弾を。取り上げる言葉は「他人に迷惑をかけないなら、何をしてもいいだろ」って言葉です。気になるのは「何をしてもいい」という部分ではなく、「他人に迷惑をかけないな…

気になる言葉シリーズ――フリーライダー

3月になればひまになるはずだったんだけど、もうすぐ任期が終わるはずの学会の庶務担当理事の仕事やらがあって、時間はあるはずなのですが、気分的にひまになったというどうも気がしません。まあ、ひまになってもブログを書いていないことの言い訳でもあり…

「報復の代行」としての死刑?、そして感情――報復権は死刑の根拠たりうるか(3)

Skyhookさん、悲しみの聖母さん、コメントありがとう。 Skyhookさんのおっしゃるとおり、駒村さんは、「死刑は、国家が、報復権を本人になりかわり、適正かつ安全に代行する制度であるといえよう」「『報復の代行』という説明以外に、国家による暴力の独占を…

自然状態というフィクション――報復権は死刑の根拠たりうるか(2)

前回、死刑制度の話を「ちょっと時期遅れの話題」として書きましたが、あとで『論座』2008年3月号でも、「死刑論議の病理」という特集が載っていることを知りました。井上達夫さんとか浜井浩一さん、芹沢一也さんなどが論文を寄せています。つまり、少しも時…

報復権は死刑存続の根拠たりうるか――ちょっと時期遅れの話題

1月21日のエントリーで、「そろそろブログを書いておかないと、1月のエントリーはゼロってことにもなりかねないので」と書きましたが、やっぱり1月のエントリーはそれだけで終わり、もう2月も中頃になりました。きのうで4日間の大学の独自入試の業務も終…

病人や障害者が「受益者」なのか

あけましておめでとうございます(もう3週間も過ぎてしまいましたが)。今年もよろしくお願いします。 きょうでセンター試験の試験監督の業務も終わり、ほっと一息つきたいところですが、1月から2月にかけては、大学教員、特に私立大学の教員にとって1年…